企業経営・業務のアイデア出しを目的として、ブレインストーミングといった会議を実施しているけれど、思うような成果を得られないとお悩みではないでしょうか。品質の高いアイデアを生み出したいのなら、効率的な手法を見つけ出すことが重要です。
この記事では、管理職の方向けに企業経営や業務に欠かせない効率的なアイデア出しの手法、ブレインストーミングの課題と解決策について解説しています。また、会議やミーティングを円滑に進めるファシリテーションのテクニックも解説しているので、実践ガイドとして参考にしてみてください。
アイデアの定義とひらめきの違い
まずは、アイデア出しの基本情報として「アイデア」の定義と「ひらめき」との違い・関係性を解説します。そもそもアイデアとは何を意味するのか、ひらめきが経営や業務とどのように関係するのか知る参考にしてみてください。
アイデアとは何か
アイデアとは、考えや意見といった意味のある言葉です。ビジネスの場面では、主に次のような意味で使われています。
- 新商品・サービスの着想
- 業務の動き方・進め方
- 課題の解決方法
例えば、社内で新たな業務を展開したいと考えた際に、参加者から「〇〇という案があります」という意見が出れば、それがアイデアです。また、業務進行に悩んでいる中、課題解決の糸口を提案されたり、新たな動き方・対策に関する発言もアイデアに該当します。
つまりアイデアとは、ビジネスを次のステージへ進める重要な考えや意見なのです。実績に基づいた意見、数値や事例といった根拠に基づくアイデアであるほど、良いアイデアだといえます。一方、考えなしに出てきた発言や、信頼性のない意見は、アイデアとしての質が低いため、良いアイデアとは言えません。
ひらめきとアイデアの関係性
アイデアと似た言葉に「ひらめき(インスピレーション)」があります。ひらめきには、思い付きや直感といった意味があり、アイデア・ひらめきは考える前後という関係性があるのです。関係性を詳しく説明するため、会議の流れをもとに2つの関係性を説明します。
まず、議題となるテーマが1つあったとしましょう。このとき、個人で思いつく考えや直感的に「〇〇すればいいのでは?」と思った気持ちは、すべて「ひらめき」に該当します。まだ頭の中で思いついただけの考えであるため、実現性や具体的な根拠がなく会議で納得してもらえるほどの効力を持っていません。
次に、ひらめきで出た考えに説得力を持たせるために、リサーチ・分析を実施します。過去の成功事例・失敗事例などを細かく調査・分析することによって、着想が固まっていきアイデアとしての効力が生まれるのです。
よって「ひらめき」が生まれ、調査や分析を行うのちに「アイデア」へと変わっていくのです。ひらめきの状態は、まだ個人的な意見という状態です。何の根拠もないため人を動かす力がありません。もし会議で意見を交わしたいのであれば、根拠に基づく考えや意見であるアイデアを持ち寄ることが重要です。
効率的なアイデア出し方法の基本
参加者に有効的なアイデアを持ち寄ってほしい、会議の中でアイデアを練り上げたいと考えているなら、アイデア出しの基本的な方法を理解して動き出しましょう。
本項では、3つのアイデア出しの方法と具体的な実施方法、そして項の最後にアイデア出しにおけるアウトプットの重要性を解説します。口頭だけによる会議で成果を出せないとお悩みなら、紹介する方法を導入してみてください。
モーニングページの活用法
参加者各個人に有益なアイデアを提案してほしいのなら、モーニングページを活用してみるのはいかがでしょうか。
モーニングページとは、朝時間を利用して思ったことをノートに書き込むアイデア検討の方法です。仕事に対して考えていること、業務の悩みや課題、その解決策を書き出してもらい会議で発表してもらいます。
管理職としての立場なら、まずは参加者全員に一定期間モーニングページを実施するように伝えましょう。役職・経験・担当している業務によって出てくる意見、書き込まれる内容が異なるため、広い視点からアイデア出しが可能となります。
ちなみにモーニングページは、ただキーワードを並べているのではなく、ロジカルに文章を書いてもらうことが重要です。例えば「人材の確保」というキーワードが出てきた場合には、次のような要素がまとめられている必要があります。
- 人材確保の課題
- 求める人材のイメージ
- 人材確保の流れ
- 人材育成期間
より具体的な情報を書けるほど、高品質なアイデアが生まれやすくなります。会議中に1~3分程度のスピーチ・説明ができるボリュームのモーニングページをまとめるのがおすすめです。
マインドマップの実践例
特定のテーマを深堀しながらアイデアを生み出したいのなら、マインドマップを活用することをおすすめします。
マインドマップとは、設定したひとつのキーワードから関連する言葉・要素を外側に広げていく放射図のことです。この思考表現方法は、イギリスの教育者であるトニー・ブザンが提唱したものであり、日常生活はもちろん世界中のビジネス・ブレインストーミングで活用されています。
あるキーワードのブロックを用意したら、関連するキーワードのブロックを外側に書き、線で結んでいくのが特徴です。外側に広がっていくほど関連する要素が深堀されるため、頭の中で考えた情報を整理できます。
また、マインドマップを会議で活用する際には、ホワイトボードを活用して、参加者で意見出ししていくのが効率的です。大勢でひとつのキーワードを深堀できるため、ハイスピードでアイデア出し・結論への導きを実現できるでしょう。
マインドマップを利用するイメージとして、例えば「ビジネスの効率化」というキーワードが出たとしましょう。このキーワードに関係する言葉として「システムの導入」「AIの活用」などが思い浮かびます。また「システムの導入」に関連するキーワードであれば「導入コスト」「ソフトの種類」などが挙げられるはずです。
マインドマップを活用して深堀することによって「こうなったら次はどうする?」という思考を巡らせることができます。マインドマップの行きつく先は結論・具体的な動き方ですので、ぜひ会議に導入してみてください。
アイデアボードの導入方法
企業経営や業務の動きを検討する際には、アイデアボードを活用することをおすすめします。
アイデアボードとは、横列に整理したい項目、縦列にチームが付箋を張り付けられる空白を設けたボードのことです。バラバラに出てくるアイデアをカテゴリ分けして整理・記録し、有益な情報を見つけるために利用する思考表現方法だといえます。
アイデアボードを導入する際には、まずホワイトボードといった大き目の盤、そして粘着力のある付箋とペンを準備しましょう。基本的に、参加者が任意に付箋を貼り付けていくだけですので、導入はアイテムを用意するだけで簡単に完了します。オフィス内の目立つ場所にアイデアボードを設置し、従業員が付箋にアイデアと名前を書いて貼り付けていくのを待ちましょう。
また会議にアイデアボードを導入する際には、付箋が張り付けられたアイデアボードを会議室へ移動させましょう。貼り付けられたアイデアの中から役立ちそうな情報だけをピックアップし、参加者同士で会議します。もしピックアップされた付箋が会議参加者のものであれば、アイデアの概要を説明してもらうのも有効です。
アウトプット重視のアイデア出しの重要性
本項で説明した「モーニングページ」「マインドマップ」「アイデアボード」は、どれも従業員の考えをアウトプットする重要な思考表現方法です。アイデア出しを実施する際には、まず議論する要素が必要ですので、3つの取り組みが会議の質を高めてくれるでしょう。
もし何も準備しないまま会議を始めても「何をすればいいのか」と話し合うだけで議論が進行しません。特に社員を引っ張るリーダーとしての素養がない企業の場合には、その状況が色濃く出てきます。
これまでブレインストーミングを実施する際に「思うように進行しなかった」「アイデアが出なかった」という経験があるのなら、今後はアウトプットを重視した3つのアイデア出しから気になる手法を選び、導入してみてください。
ブレストの課題と解決方法
中には、ブレインストーミング自体のやり方がよく分からず、うまく進行できないと悩む方もいるでしょう。もしかするとそれは、次のことが原因かもしれません。
- 参加者がブレインストーミングのことを理解していない
- 参加者が緊張して話さない
- 雑談の場になってしまう
- アイデア出しする人・しない人がいる
- 方向性がズレていく
こういったブレインストーミングの課題を解決するためには「実施するテクニック」「実施方法」「実施バランス」「外部人材の活用」が欠かせません。本項では、ブレインストーミングがうまくいかないという問題を解決し、効率化する方法を解説します。管理職としてブレインストーミングの改善を目指しているのなら、ぜひチェックしてみてください。
アイスブレイクの実践テクニック
ブレインストーミングで、参加者があまり発言してくれないとお悩みなら、本題に入る前にアイスブレイクを試してみるのはいかがでしょうか。
アイスブレイクとは、ブレインストーミングや会議開始前の5分程度の時間を使って雑談するやり取りのことです。雑談には参加者の緊張を解きほぐす効果があるほか、参加者同士の雰囲気を知り、会議で話しやすい雰囲気を作り出すことに役立ちます。
アイスブレイクで雑談する内容に決まりはありません。自由に話題を出して参加者全員で言葉を交わしあいましょう。参考として、アイスブレイクに最適な鉄板ネタを以下に整理しました。
鉄板ネタ | トーク内容の例 |
周辺情報の話題 | ・職場近くのおいしいお店 ・新しくできた施設や建物 |
天気の話題 | ・異常気象に関する話 ・直近の天気予報 |
趣味に関する話題 | ・参加者が習慣化していること ・日々取り組んでいること |
時事ネタに関する話題 | ・ニュースで取り上げられている話 ・職場に関する話 |
管理職という立場であれば、率先して話題出しすることをおすすめします。緊張をほぐすアイスブレイクと言えど、誰かがアクションを起こさなければ雑談の内容が膨らみません。自分から「会議の前に少し雑談しましょう」と話題を切り出してみてください。
また、アイスブレイクでは政治・宗教・恋愛といった思想や考え方の違いを生み出す話題はNGだと言われています。リスクのある話題を出すことは、できる限り避けましょう。
アナログとデジタルの融合のメリット
ブレインストーミングは、資料やペンといったアナログなツール、そしてPC・タブレットを活用したデジタルなツールを組み合わせて実施するのがおすすめです。
企業の場合、ブレインストーミング用に出力した資料を使って会議を進めるのが一般的でしょう。しかし、資料を読むために顔を伏せることが多いため、議論が進みにくくなるケースがよくあります。また議論中にもかかわらず、資料の内容を読み進めてしまう人がいることから、会話に参加してくれない人も出てくるのです。
よって、顔を上げた状態、参加者全員が1方向に目が行く状態で会議を進めるため、プロジェクターやスクリーンを用意することをおすすめします。ブレインストーミングは議論を交わしアイデアを生み出すために実施します。参加者が議論してくれる環境を作り出す必要があるため、メインをデジタルのプロジェクター、サブとして紙の資料を使うのが良いでしょう。
また、議論している内容の書き留め作業を、紙とペンで実施するのは効率的ではありません。業務の手間を減らすために、音声入力アプリや録音ツールを準備しておくと便利です。
アイデアの発散と収束のバランス
ブレインストーミングでは、アイデアの発散と収束にかける時間や労力のバランスを考えることが重要です。
「アイデアの発散」とは、新しいアイデアを生み出すプロセスを指します。参加者の発言や議論など、アウトプットを含む言葉のやり取りが「発散」です。
また「アイデアの収束」とは、発散された情報をまとめ、企画として立ち上げることを指します。ただアイデア出ししてもらうのではなく、それを現実的な形にまとめ上げることがブレインストーミングに欠かせない動き方です。
限られた時間内で話し合うブレインストーミングでは、発散と収束のバランスを意識することが欠かせません。もし1時間の会議を予定しているなら、前半30分で発散、後半30分で収束に取り組むというように、両方を計画的に実施することが重要です。
一方、発散の話題が盛り上がって50分程度時間がかかった後、10分間で収束の話し合いを実施するのは非現実的です。次回の会議に話が持ち越されてしまうのはもちろん、参加者の熱が冷め、収束の質が落ちてしまうかもしれません。
アイデア出しは具体的な方向性を定めるまで気を抜いてはいけません。管理職として、会議をまとめるのなら、発散・収束のバランスを考えたタイムスケジュールで会議を進行してください。
異文化や異なるバックグラウンドの人材の活用方法
「ブレインストーミングを実施しても同じような意見しか出てこない」とお悩みなら、異文化・異なるバックグラウンドの人材を参加者に加えるのがおすすめです。ここで説明する異文化・異なるバックグラウンドの人材とは、次のような人を指します。
- 生活圏・出身地が異なる人材
- 新卒・転職入社の人材
- 役職・経験年数の異なる人材
- 国籍の異なる人材
- 特定分野の知識を有する人材
違う考え方をもつ人が集まり議論を交わせば、これまでになかった新しい意見やアイデアが生まれやすくなります。また、これまでの会議では気付けなかった考え方や方向性が見えてくるかもしれません。
管理職として参加者を指名する権限があるのなら、まずは従業員のバックグラウンドを調べましょう。特に新規事業や新技術の導入、業務領域の展開を検討している場合には、その分野に詳しい人材に参加してもらうことが重要です。「いつものメンバー」「よく見る顔ぶれ」でブレインストーミングがうまくいかない際には、ぜひ参加者の構成を再検討してみてください。
効果的なファシリテーションのテクニック
限られた時間で会議を進行しなければならないが「毎回時間オーバーしてしまう」「持ち越しになることが多い」とお悩みではないでしょうか。それならぜひ、会議を円滑に進めるファシリテーションテクニックを理解して会議で実践してみてください。
会議の円滑な進行は、経験を重ねること以上に、テクニック・ノウハウを学ぶことが重要です。会議進行を流れに任せていたという管理職の方は、ぜひテクニックを活用してみてください。
質問法の基本
参加者からアイデアを聞き出したいときには「質問法」が役立ちます。
質問法とは、議論したい情報を質問表にまとめて、参加者1人ずつに質問していくテクニックです。順番に回答を得られるため、効率よくアイデアを集めやすい進行方法だと言えます。
また、質問法で聞き出した情報をもとに議論の時間を設けておけば、情報の深堀が可能です。誰から出た回答がもっとも現実的で効果的なのか会議できるので、まずは質問表を準備してみてください。
ただし、いきなり質問を投げかけても回答できない参加者もいます。良いアイデアを得たいのなら、事前に作成した質問表を参加者に配布しておくのがおすすめです。
アクティブリスニングの実践方法
会議の進行役に欠かせないテクニックとして「アクティブリスニング」が挙げられます。
アクティブリスニングとは、話し手の話を受動的に聞くのではなく、主観的に把握して内容・問題の本質を明確化する姿勢のことです。進行役は参加者の意見を聞き、とりまとめを実施する役割があるため、内容を具体的に理解しなければなりません。
アクティブリスニングでは一般的に、以下に示す2つのテクニックを実施します。
- バーバルコミュニケーション:言語によるコミュニケーション
- ノンバーバルコミュニケーション:非言語(態度)によるコミュニケーション
バーバルコミュニケーションでは、オウム返しのように言葉を繰り返す「パラフレーズ」、YES/NOで回答できない質問を投げかける「オープンドクエスチョン」を組み合わせて話し手が話す内容を深堀し、理解していくのが特徴です。
また、ノンバーバルコミュニケーションでは、表情や身体の方向を意識した「目線」「表情」「声のトーン」など、聞く姿勢を意識します。「自分の話をしっかり聞いてくれている」と伝えることができるほど、話者が話しやすくなる、アイデアを出しやすくなるのがメリットです。
アクティブリスニングによって会議の質が大きく変化するため、ぜひ意識しながら会議を進行してみてください。
アイデア評価のルールの設定方法
長期的にブレインストーミング・会議を実施したいのなら、参加者に対しアイデア評価を実施してください。なぜなら、評価・採用されないまま放置された参加者が、やる気を失ってしまうからです。
一度やる気を失った参加者は「どうせ自分のアイデアは採用されない」「発言しても意味がない」と会議への意欲を失ってしまいます。結果として、会議全体の品質低下につながってしまうため、必ずアイデア評価のルールを設定してから会議をスタートしましょう。
例えば、発言してくれたアイデアに、改善点や評価点を付けるのがおすすめです。アイデアの良かったポイント・悪かったポイントを伝えることによって「しっかり評価してもらえている」と認識してもらえます。参考として、評価項目を以下に整理しました。
- 実現性
- 収益性
- 緊急性
- 重要性
- 独自性
- 効果性
- 将来性
- インパクト
- 優位性
- 展開性
- リスク
各種評価項目は、5点満点や10点満点で評価します。会議の最後に評価時間を設けるなど、会社に合ったアイデア評価のルールを決めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
この記事では、管理職向けのアイデア出しガイドとして、アイデアの概念やひらめきとの違い、ブレインストーミングや会議を効率的かつ高品質にするテクニックを紹介しました。
企業にとって欠かせない会議ですが、必ずうまく進行できるとは限りません。もしアイデア出しに役立つツールを探しているのならチームで利用できる「MindManager」がおすすめです。
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