コスト見積もりは、決められた期間内にプロジェクトを完了するために必要なすべてのリソースのコストを予測するプロセスです。
コスト見積りが正しく行われると、プロジェクト予算が決定され、スケジュールの設定やビジネスリソースの管理に役立ちます。また、企業が顧客に商品やサービスの代金を請求する際の料金も、この見積もりによって決まります。このように、コスト見積もりは、事業運営とプロジェクト管理を機能させるために不可欠なものです。
不正確な見積もりは、収益性の損失、リソースの不正確な配分、意思決定の誤りなどにつながります。最終的には、プロジェクトの失敗につながる可能性があります。実際、プロジェクト範囲を過大または過小評価したコスト見積もりによってプロジェクトの28%は失敗しています。
この記事では、さまざまな種類のコスト見積もり手法と、プロジェクトコストの可視化させるマインドマップをコスト見積もりに使用する方法について紹介します。
コスト見積もりの基本
プロジェクトに必要なすべてのリソースを計算するとき、なかには他のリソースよりも明白なものがあるかもしれません。例えば、材料、機器、労働力、ベンダー、施設などは、一般的にリソースとみなされます。しかし、その他のリソース、例えば、リスク軽減計画や方針などは、プロジェクトのコストにおいて、あまり目立たない(しかし、重要な)要因かも知れません。
各リソースは、直接または間接費とみなされます。
- 直接費とは、特定の分野(部門など)に関連するコストです。人件費、材料費、設備費などはすべて直接費の例で、部門やプロジェクトに簡単に関連付けることができます。
- 間接費とは、組織全体に関わるコストです。家賃、光熱費、消耗品費などはすべて、特定のプロジェクトや部門に関連付けることができない(しかし、ビジネスが機能するためには必要な)間接コストの例です。
コストの見積もりプロセスには、プロジェクトの直接費と間接費の両方を考慮することが含まれます。
直接費は、プロジェクトの予算から支払われます。サービス、製品、組織部門などの原価対象に接続されています。直接費の多くは変動費であり、プロジェクトの完了に必要なものによってコストが変動することを意味します。
間接費は、特定のプロジェクトに直接関連していないため、計算がより困難です。間接費は、特定のプロジェクトの予算から直接支払われるのではなく、複数のプロジェクトに配分されます。
多くの企業は、間接費をプールに分類し、間接費率としてプロジェクト目標に適用しています。各間接費プールは、間接費配賦基準に配賦される。
- フリンジ・コストは、給与税、健康保険、労災費用など、スタッフに関連するものです。間接的なフリンジ費用は、通常、総労働力に対して配分されます。
- 諸経費は、貴社の製品やサービスとは直接関係しませんが、事業を運営するために必要な費用です。経理、事務、ITなどの経費はすべて諸経費の例であり、機械稼働時間や人件費に基づいて配分されます。
- 一般管理費(G&A)とは、家賃、光熱費、事業保険料など、企業が事業を継続するために支払わなければならない日常的なコストです。G&A費の配賦基準には、総原価(G&A費プールに含まれないすべての組織コストにG&A費を適用)と付加価値(G&A費は組織コストのみに配賦し、下請けや仕入に関する費用は除外する)があります。
直接費と間接費を理解し、分類することで、コストの見積りを改善することができます。どちらの変数も最終的なプロジェクトコストを計算する上で重要であり、直接費と間接費の両方を考慮しないと、コストが過小評価される可能性があります。
プロジェクトのコストを正確に見積もるには、まず、作業範囲を検討する必要があります。作業範囲は、プロジェクトチームがプロジェクトを実現するために必要なタスクを特定し、必要なコストを見積もるのに役立ちます。
4つの一般的なコスト見積もり法
コストの見積もりには多くの方法があり、組織はコストの見積もりプロセスにおいて複数の手法やツールを適用することができます。どの手法が適しているかは、ビジネスの規模や業界によって大きく異なります。以下は、最も一般的な4つの見積もりの方法です。
どのような状況であっても、正しい意思決定モデルは、あなたとあなたのチームが状況をよりよく理解し、分析することで、その対処法や解決法について最良の選択をするのに役立ちます。
1. トップダウン方式
トップダウン方式は、経営者や投資家など、大規模なプロジェクトのコスト見積もりが必要なものの、各部門や事業体の詳細を知らない経営者層がよく使う見積もり手法です。
この方法は、大規模なプロジェクトを細かく分割し、管理者がその計画を各部門の専門家に伝え、具体的なコスト関連の詳細を収集するものです。
トップダウン方式が必要な例として、新社屋建設があります。例えば、新社屋を建設する場合、事業主は事業場所を選定する能力はあっても、エレベーターなどの設備にかかる費用など、プロジェクトの詳細を決定する能力はありません。
そこでマネージャーは、これらの予算関連業務を専門家に任せ、その報告書をもとにプロジェクト費用の見積もりを作成することになります。
2. ボトムアップ/分析的手法
ボトムアップ/分析的手法は、プロジェクトの個々の部分(特定のタスクなど)をすべて見積もり、それらを合算してプロジェクトの総コストを算出する方法です。これは、プロジェクト全体の予算との関係で各タスクや仕事のコストを特定するトップダウン方式の見積もり方法とは逆の方法です。
ボトムアップ手法によるコスト見積もりは、このきめ細かいアプローチによって以下のことが実現されるため、精度が高いと言えます。
- チームメンバーやその他の利害関係者の役割と責任を明確にし、各自が担当する特定のタスクを見積もります。
- ある作業の過小評価を他のコンポーネントの過大評価で相殺するなど、プロジェクトコンポーネント間の誤差を緩和することができます。
- 他のコスト見積もり手法と統合し、全体的な精度を向上させる(パラメトリック手法を使用して特定の作業活動に必要なリソースを特定するなど)。
- プロジェクトマネージャーが課題を予測し、チームメンバーが必要に応じて潜在的な問題に対応できるようにすることで、プロジェクトの各フェーズにおけるリスクを低減する。
ボトムアップ手法の例として、IT部門がオンプレミスのアプリケーションをクラウドに移行する必要がある場合に適用することができます。ボトムアップ手法を用いると、プロジェクトチームのメンバーは、プロジェクトに関わるタスクを特定します。
見積もりプロセスの1つには、アプリケーションをホストするために必要なクラウドストレージの容量を調べることが含まれます。必要な容量が分かれば、アプリケーションをクラウドに保存するために組織が負担するコストを割り出すことができます。
ミッションクリティカルなアプリケーションのクラウドへの移行は、移行するソリューションの種類、使用人数、クラウド統合のレベルなどによって、長時間に及ぶ多段階のプロセスになる可能性があります。移行プロジェクトに関連する個々のタスクに注目することで、コストを正確に見積もり、ニーズと予算に最適な移行戦略を選択することができます。
3. パラメトリック手法
パラメトリックコスト見積もりは、プロジェクトコストを決定するために、過去の統計データを適用します。正確な見積もりを行うために、コスト変数と過去のプロジェクトのデータポイントを使用します。パラメトリック手法で使用される変数の例としては、単価、リソースの使用期間、必要なリソースユニット数などがあります。
パラメトリック見積もりは、類似のプロジェクトに再利用できるため、新しいプロジェクトごとにデータの品質が向上します。しかし、現在のプロジェクトと過去のプロジェクトで要因が異なる場合、パラメトリック推定の精度に影響を与える可能性があります。これらの要因には、以下のようなものがあります。
- 人員と経験: プロジェクトチームに、類似のプロジェクトに関連する経験やスキルセットを持たないスタッフが含まれている場合、専門家のプロジェクトチームに基づく過去のデータは、現在のプロジェクトを完全に反映するものではありません。
- 無形資産: 創造的なプロジェクトや、異なる量の思考や創造性を必要とするタスクは、無形のアウトプットの比較や繰り返しが難しくなるため、パラメトリックコスト見積りの精度が低くなります。
パラメトリック手法の計算式は以下の通りです。
見積もりプロジェクトコスト = パラメータあたりのコスト × パラメータ値
- パラメータとは、面積や製品ライン数などの測定単位である。
- パラメータ単位当たりのコストは、過去のデータ、市場、業界のデータから収集した平均値を用いて、タスクを完了するためのコストを表します。
- パラメータ値とは、プロジェクトコストの見積もりに使用したパラメータ単位の数です(3,500平方フィート、15製品ラインなど)。
4. 3点法
3点法とは、3つの異なるシナリオでプロジェクトを見ることにより、プロジェクト管理者がコスト見積りの精度を上げるための方法です。
- 楽観的: これは、プロジェクトが問題や混乱もなく順調に進むという最良のシナリオを考慮したものです。
- 悲観的: 遅延、リソース不足、非効率的な作業プロセスなど、プロジェクトタスクの完了に向けた最悪のシナリオを表しています。
- 現実的: 最も可能性の高いシナリオで、悲観的な条件と楽観的な条件の両方を見積もり、その中間に位置するようにします。
3点推定を計算するには、3つのシナリオの平均を取ります。
予想される見積もり=(楽観的+悲観的+現実的)÷3
未来を予測することは不可能に近いですが、この3つのシナリオを考慮することで、経営者は将来の潜在的なリスクを特定し、適切な予算を立てることができます。
3点見積もり法は、プロジェクトのリスク(コストや期間など)を計算する必要があるにもかかわらず、計算を始めるための正確な初期見積もりがない場合に特に有効です。
例えば、ある企業が初めて取り組むプロジェクトで、作業に必要な労働力に関する具体的なデータがない場合などです。
このように、3点見積もり法では、最悪のケースと最善のケースを想定して見積もりを行うことで、プロジェクトの範囲を過大評価したり過小評価したりしないようにします。
コスト見積もりおけるMindManagerの活用
コストの見積もりは、多くの関係者の協力が必要な場合が多いです。すべての関係者の間で効果的なコミュニケーションを図るために、MindManager®のようなツールを利用してみてください。
MindManagerは、マインドマップも作成できる図式作成ツールです。マインドマップは、複雑なアイデアを「見える化」するのに役立ち、強力な(そして創造的な)コミュニケーションおよび学習ツールとなり得ます。
MindManager には計算ツールが組み込まれており、マインドマップの世界に財務を統合することができます。ここでは、MindManager を使用して、次のプロジェクトのコスト見積りを作成する方法を説明します。
- プロジェクトのすべてのタスクと、そのタスクを完了するために必要なリソースの詳細なリストを作成します。
- MindManager で新しいマップを作成し、プロジェクトマップの中央または左側にノードまたはバブルのラベルを付けて、必要な各リソースとそれに関連するタスクを書き出します。
- 各タスクの完了に必要な時間を見積もって、プロジェクトスケジュールのタイムラインを作成します。
- 選択したコスト見積もり方法に基づいて、プロジェクトを計算します。コスト見積もり式を処理するために、カスタム式を作成することもできます。
コスト見積もりは、多くの MindManager ダイアグラムを使用して作成することができます。たとえば、スパイダー図を使用して、マッピングされた視覚的なインターフェイスでプロジェクト データを整理することができます。これは、特定の細かい詳細を広い概念にリンクさせることで、プロジェクト計画に関連する複雑な情報を把握するのに役立ちます。
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この記事は、How to tackle your next cost estimation project | FEBRUARY 23, 2022 を翻訳したものです。